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国立天文台ニュース | 国立天文台(NAOJ)

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3

National Astronomical Observatory of Japan

       2018 年 3 月 1 日 

No.296

2 0 1 8

天文台メモワール

7回天文

シン

7回

シン

」 ン ーン

国立天文台 所

年 2

し し

カレンダー

2 7年の

岡山天体物理観測所

(2)

2018

03

pa

g

e

NAOJ NEWS

国立天文台ニュース

C O N T E N T S

国立天文台カレンダー

● 1 日(木)天文情報専門委員会

● 3 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

● 7 日(水)幹事会議

● 9 日(金)4D2U シアター公開&観望会(三鷹)

● 10 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

● 17 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

● 21 日(水)幹事会議

● 24 日(土)観望会(三鷹)

● 28 日(水)プロジェクト会議

● 3 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

● 5 日(月)天文データ専門委員会/太陽天体プラズマ専 門委員会

● 7 日(水)幹事会議

● 9 日(金)運営会議/4D2Uシアター公開&観望会(三鷹)

● 10 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

● 17 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

● 20 日(火)幹事会議

● 24 日(土)観望会(三鷹)

●7 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

●13 日(金)4D2U シアター公開&観望会(三鷹)

●14 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

●21 日(土)4D2U シアター公開(三鷹)

●28 日(土)観望会(三鷹)

2018 年 2 月 2018 年 3 月 2018 年 4 月

表紙画像

岡山天体物理観測所188 cm 反射望遠鏡ドームと冬の星 空。(撮影:飯島 裕)

背景星図(千葉市立郷土博物館) 渦巻銀河 M81画像(すばる望遠鏡)

特別附録!

岡山天体物理観測所スペシャル・ポ

スターを同封します!

今月号の特集「岡山天体物理観測所―57

年、宇宙を見つめて―」のスペシャル・ポ スターをお届けします(※台外発送分のみ)。

39

40

03

02

32

● 表紙

● 国立天文台カレンダー

特集

岡山天体物理観測所

―57 年、宇宙を見つめて―

★岡山天体物理観測所のこれから 林 正彦(第5代国立天文台長)

★岡山天体物理観測所から岡山天文コンプレックスへ 泉浦秀行(岡山天体物理観測所長)

● 岡山天体物理観測所の歴史

● 岡山天体物理観測所の研究成果アラカルト

・一つの時代の終焉に思う 竹田洋一(国立天文台 光赤外研究部) ・HIDES で切り込んだガンマ線連星 HESSJ 0632+057の正体  森谷友由希(東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構)

・光赤外線大学連携を通じた近傍超新星の徹底観測:スーパーチャンドラセカール超新星 の正体に迫る 山中雅之(広島大学宇宙科学センター)

・岡山天体物理観測所での彗星アウトバーストの研究 石黒正晃(ソウル大学物理天文学科) ・Radial velocity survey of detached eclipsing binaries Krzysztof Helminiak

(N. Copernicus Astronomical Center, Polish Academy of Sciences and Subaru Telescope, NAOJ [till 2016])

・多色トランジット測光による地球型系外惑星の観測 福井暁彦(岡山天体物理観測所)

● 188 cm 反射望遠鏡のこれから

・188cm 望遠鏡と視線速度精密測定 佐藤文衛(東京工業大学) ・多色トランジット観測装置 MuSCAT のこれから 成田憲保(東京大学) ・ドップラー振動撮像装置を用いた木星表面振動観測 生駒大洋(東京大学)

★岡山天体物理観測所ギャラリー

● 共同利用完遂記念・座談会

岡山観測所が果たした役割とその未来 前原英夫・沖田喜一・泉浦秀行

★岡山天体物理観測所、全国共同利用をここに完遂せり

天文台メモワール

● 「退職にあたって」 浮田信治(岡山天体物理観測所)

● 退職のご挨拶「47年間お世話になりました」 川島 進(技術推進室)

● 「TMT の5年間」 宮下隆明(TMT 推進室)

おしらせ

● 「第37回天文学に関する技術シンポジウム」報告 上野祐治(水沢 VLBI 観測所)

● 第7回DTAシンポジウムの報告 祖谷 元(理論研究部)

● 「ふたご座流星群、皆既月食」キャンペーン報告 石崎昌春(天文情報センター)

● 国立天文台・所蔵資料の補修作業 小栗順子(天文情報センター)

● 「一般社団法人 日本カレンダー暦文化振興協会 2017年の活動」報告

片山真人(天文情報センター)

● 平成31年(2019)暦要項を発表しました! 片山真人(天文情報センター)

● 編集後記/次号予告

シリーズ

「アルマ望遠鏡観測ファイル」24

―最終回―

暗黒の宇宙を見つめる、アルマ望遠鏡 

平松正顕(チリ観測所)

(3)

57

1960年10月、当時東洋最大の188 cm反射望遠鏡を備え た本格的な観測施設として産声を上げた岡山天体物理観 測所は、以来58年の長きにわたって、日本の光赤外天文 学を牽引してきました。岡山で腕を磨いた人々が、その後 の日本の天文学の発展を各所で支えてきたといっても過言 ではありません。2017年末に共同利用業務を終え、2018 年3月をもって組織としての一区切りを迎える岡山天体物理 観測所。今回はその記念特集をお送りします。

(4)

 岡山天体物理観測所は、2018年3月末をもって国立天文

台の「プロジェクト」としての位置づけを廃止することと

なりました。これは、188 cm望遠鏡を中心とした全国大

学等の研究者に対する共同利用事業を終了することを意味 します。国立天文台が岡山天体物理観測所で行ってきた共

同利用は、まもなく隣に完成する京都大学3.8 m望遠鏡へ

と引き継がれます。既存の188 cm望遠鏡等は完全に閉鎖

されるわけではなく、大学等の研究者による専用望遠鏡と して、これまで以上に有効に活用される見込みです。

 岡山天体物理観測所は、1960年に当時の東京大学東京

天文台の施設として発足しました。それ以来58年間、多

くの職員の努力と、地元自治体からの強いご支援により、 今日まで運営を続けてくることができました。この観測所 で培われた経験はすばる望遠鏡へと引き継がれ、日本の光 学赤外線天文学が世界の第一線に並ぶために大きな役割を 果たしました。

 この間、1988年に東京天文台が他の2機関とともに改組

し、文部省の国立大学共同利用機関(当時)として国立天 文台が発足しました。当時、日本の地上天文学が国立天文 台のモノポリーになるのではないかと、改組を危惧する声 がありました。この不安は払拭されたと私は思っています。  その理由は、ひとつには改組後に国立天文台が最初に進 めた大型計画「すばる望遠鏡」が、大成功したことです。 特に重要なことは、これが「共同利用」としての成功を意 味しており、大学の研究者等がすばる望遠鏡を利用して、 世界が注目する成果を数多く出せるようになったことです。  ふたつめには、すばる望遠鏡による研究をさらに発展さ せ、またこれと相補的でユニークな研究を進めようと、多 くの大学が新たな望遠鏡計画を立案し、実現させたことで

す。名古屋大学では、南アフリカで1.4 m望遠鏡(IRSF)

が、またニュージーランドで1.8 m望遠鏡(MOA-Ⅱ)が

活躍しています。東京大学では、チリで標高5600 mの

チャナントール山頂に6.5 m望遠鏡(TAO)を建設中です。

また京都大学は、岡山天体物理観測所の隣に、日本で初め

てのセグメント鏡となる3.8 m望遠鏡を建設しています。

これらを見ると、大学が海外の最適地に望遠鏡を建設する ことに、もはや抵抗は無くなったように見受けられます。  このように、国立天文台がひとつの大学では実現不可能 な大型計画を推進して、共同利用を通してトップレベルの 研究成果が挙げられる機会をコミュニティに提供し、また 同時に大学がそれぞれの特徴を活かした望遠鏡を実現して 独自の研究を進め、天文学の裾野を広げています。この状 態は、モノポリーどころか、大学と大学共同利用機関の理 想的な関係のように思われます。

 国立天文台のこのような役割を考えれば、もはや大型で はない岡山天体物理観測所の望遠鏡は、共同利用の使命を 果たし終えたと言えます。岡山における国立天文台の新た

な役割は、京都大学の推進する3.8 m望遠鏡を支援し、こ

れによる共同利用を実施することでしょう。国立天文台の プロジェクトとしての岡山天体物理観測所を終了するの は、そのためです。

 既存の望遠鏡の今後ですが、今までのような共同利用 サービスは無くなります。しかし、今後はセルフサービス の望遠鏡として、大学等の研究者に好きなだけ活用しても

らえると思っています。たとえば、188 cm望遠鏡による

系外惑星観測を推進するため、東京工業大学には系外惑星

観測研究センターが発足しました。188 cm望遠鏡は、こ

れまでも系外惑星の観測に有効に活用されて来ました。今 後はさらにその強みを生かした観測が続けられるものと期 待しています。また、自治体等と協力した観望会なども開 催して行きたいと思います。

 今後とも、岡山の望遠鏡群の活躍にご期待下さい。

岡山天体物理観測所のこれから

(5)

 平成29年末に188 cm望遠鏡の共同利用も終わり、

平成30年3月末でCプロジェクト岡山天体物理観測所

は解散します。無事に解散することができそうで、今 は安堵感で一杯です。ここに至るまで、観測所員のみ なさん、光赤外コミュニティ、地元の方々、国立天文 台執行部、事務部、図書室、その他大勢の方々にご努 力頂きました。この場をお借りして感謝申し上げます。  国内にしっかりしたユーザー層があり、成果も順調 に出ている現役の観測所を閉じるのは、おそらく国立 天文台にとって初めてのことだろうと思います。平成

22年に当時の観山台長から示された大方針に沿って、

時にはジグザグに、ここまで進んできました。国立天 文台がプロジェクト制を敷き、トップダウンの色彩を 強めてきた一つの成果であったかと思います。今後、 国立天文台の他のプロジェクトにも影響が及んでいく のではないかと想像しています。

 さて、ここで一つだけ留意しておきたいことがあり

ます。岡山天体物理観測所が解散する平成30年3月ま

で、日本の大学が国内にせよ海外にせよ、天体高分散 分光施設を持つに至ることは結局ありませんでした (太陽観測施設を除く)。岡山天体物理観測所は国内最 大かつ唯一の天体高分散分光施設で在り続けました。 今後、意思ある大学が天体高分散分光施設を持てる時 代が来るように、国立天文台は大学を支援して行く必 要があるように思います。この点を改めて強調してお きたいと思います。

 個人的には、相変わらず仕事は多いのですが、守る べき雇用も予算も無くなり、穏やかな気持ちで日々を 送れるようになりました。岡山天体物理観測所にやっ て来た頃のことを思い出しています。高分散分光器の 開発に専念していて、毎晩ヘールボップ彗星が明るく

空にかかっていたのにも関わらず、ただ眺めるだけで 全然観測しようとは思わなかったあの頃のことです。

半年後には3.8 m望遠鏡の共同利用が始まり、観測日

程を守るために、また落ち着かない日々を送ることに なるのだろうと思いますが、それまでは束の間のこの 時間を味わっておこうと思っています。

 そういえば最近、いつの間にか花粉症から脱却して いることに気が付きました。どうも鼻の粘膜が鈍感に なったようです(歳のせいだと思っていますが、スト レスのせいではと言う人もいます)。ただ、山から昇 りたつ春の匂いを感じなくなってしまい、コーヒーの 香りすら分からないので、人生の楽しみを一つ失った 気がしています。でも、そんなことも、間近に迫った 新しい時代が忘れさせてくれるものと思います。若い

人々の力で3.8 m望遠鏡が順調に観測を開始すること

を期待してやみません。

 国内のどこを見渡しても、4 m級と2 m級の望遠鏡

ドームがそびえ、大学が運用する小望遠鏡が多く集ま り、専門的な博物館まで備わっている場所は他にあ りません。旅行者にとっても楽しい場所になるのでは ないかとの予感があります。それで、これらを総称す る名前を考えてみました。岡山天文コンプレックス

(Okayama Astro-Complex, OAC)というのはどうで

しょうか?我ながらもっと素敵な名前は考えられな

いのかとがっかりします。この文を読んでくださって いるみなさん、是非、竹林寺山の頂に展開された天文 学関連施設への思いを込めて、一緒に考えてください。

 平成30年4月、いよいよ私たちは岡山新時代へ漕ぎ

出します。岡山天文コンプレックス(仮称)の活躍に ご期待ください。

岡山天体物理観測所から岡山天文コンプレックスへ

(6)

西暦 出来事 観測装置

188 cm反射望遠鏡

91 cm反射望遠鏡 65 cmクーデ型太陽望遠鏡

50 cm望遠鏡

その他

1953 日本学術会議より大望遠鏡の設置を政府に要求(5月) 1954 第望遠鏡設置場所の調査開始(気象資料、星像実地観測)19回国会において188 cm反射望遠鏡購入予算可決(6月) 1954~55 望遠鏡設置場所試験観測

1955 188 cm反射望遠鏡をグラブ・パーソンズ社に発注(2月)

1956 最適地として岡山県浅口郡、小田郡にまたがる竹林寺山に決定(6月) 91 cm反射望遠鏡を日本光学に発注(6月)

1957 敷地付近の鉱区禁止地域指定、禁猟区、保安林などの指定(1月)

1957~59 岡山県および地元の厚意により、敷地、水源、電力など完成

1958 188 cm:ドーム建物工事開始(12月)

91cm:ドーム建物工事開始(12月)

1959 91cm反射望遠鏡完成(3月)

1960 10月19日開所式挙行

188 cm:ドーム完成(3月)

188 cm反射望遠鏡がイギリスから到着(4月) 188 cm反射望遠鏡据え付け完了。予備観測開始(10月) Q、G分光器 使用開始(カセグレン焦点、~1972、~1979) 写真直接撮像カメラ 使用開始(ニュートン焦点、~1999)

91cm:ドーム完成(7月)

1961 本館完成( 3月)

1回観測プログラム協議会を開催(12月) 91cm:光電測光器・1号機使用開始(~1966) 1962

観測環境保持について関係各方面と連絡・懇談を開始 昭和天皇、皇后両陛下行幸啓(10月)

岡山国民体育大会採火(10月)

本観測開始(4月)

F/4、F/10分光 使用開始(クーデ焦点、~1989)

91cm:本観測開始(4月)

91cm:グレーティングスキャン分光器・1号機使用開始(~1969)

スペクトル比較測定器使用開始(~1984) 1963 観測所西方から出火(防団、自衛隊により鎮火)3月・約70ヘクタール焼失、火線が600 mまで接近。近隣市町村消

星雲分光器 使用開始(ニュートン焦点、~1965) エシェル分光器 使用開始(クーデ焦点、~1965)

写真濃度測定器使用開始(~1975)

自記マイクロフォトメーター使用開始(~1975)

1964

1965 池谷・関彗星、近日点通過(10月) 65cmクーデ型太陽望遠鏡の建設開始

1966 文部省研究班による観測所周辺地域の屋外照明調査および照明器具開発の研究

X線星の世界最初の光学発見(6月) 91cm:光電測光器・2号機使用開始(~1979)

1967

40 mm映像増幅管(Ⅰ.Ⅰ.) カーネギーより貸与。クーデ分光器に装着。使用開始(~ 1990)

91cm:Z分光器使用開始(~200X)

1968 常陸宮、同妃殿下が岡山天体物理観測所を視察(5月) 65cmクーデ型太陽望遠鏡完成(3月)

1969 Ⅰ.Ⅰ.分光器 使用開始(カセグレン焦点、~1989)

65cm:クーデ分光器使用開始

1970 91cm:グレーティングスキャン分光器・2号機使用開始(~1980)

91cm:3色同時測光器使用開始(~1990)

1971 月までの距離測定のためのレーザー実験(浩宮徳仁親王殿下が当観測所をご見学( 4月)

11月) 91cm

:光電測光器ディジタル化始まる

当観測所工場に小型旋盤購入

1972

ジャコビニ流星雨騒動(10月)

岡山天体物理観測所観測協力連絡会議結成(岡山県生活環境部、国および県の関係諸機 関、近隣市町村および商工会、関連企業から構成)

「天体物理観測における観測精度」研究会開催(遙照山保養センター)

1973 広波長域分光器 使用開始(カセグレン焦点、~1990)広波長域分光計用ミニコン OKITAC4300C使用開始(~1984)

1974 1975

1976 大沢清輝所長退官、山下泰正所長就任(4月) フーリエ分光器 使用開始(クーデ焦点、~1996)

1977 91ステムが完成cm:赤経軸(極軸)、赤緯軸にエンコーダ取り付け。マイクロコンピューター表示シ

1978 赤経軸(極軸)、赤緯軸にエンコーダ取り付け。マイクロコンピューターTVモニター表示システムが完成

岡山天体物理観測所の歴史

58年間の岡山天体物理観測所の歴史を

略年表で振り返ってみましょう。

赤字は主な研究成果

(7)

1979 新食堂、研究室完成(日本天文学会秋季年会開催(3月)

10月、鴨方町民会館)

ドーム改修(3月)、スリット扉、昇降床油圧系、ドーム給電系、クーデ室空調機、その他 IDARSS 使用開始(クーデ焦点、~1995)

91cm:光電測光器・3号機使用開始(~1992) 91cm:制御系改修、アナログ系から計算機制御へ

光電測光器、望遠鏡制御用としてミニコンOKITAC50/10 FOS(DOS)使用開始(~ 1992)

1980 各焦点に暗視スコープ+TVカメラシステムを導入

1981 岡山天体物理観測所観測シンポジウム開催(鴨方町民会館)

1回天文学に関する技術シンポジウム開催(鴨方町民会館) 観測所工場に中型精密旋盤を購入 1982 落雷事故多発。び同計算機(カード約188cm反射望遠鏡IDARSS(Ⅰ.Ⅰ.部破損)、91cm反射望遠鏡制御系及

15枚破損)、太陽望遠鏡インターフェース被害甚大

65cm:マグネトグラフ本格運用始まる マグネトグラフ用計算機(メルコム70)納入

1983 太陽磁場研究会開催(鴨方町民会館) ドームスリット部修理

65cm:90mmⅠ.Ⅰ. 使用開始(クーデ焦点、~1989)

1984 第1回岡山天体物理観測所ユーザーズミーティング開催(11月、東大図書館)

ファブリ・ペロー分光器 使用開始(クーデ焦点、~1996) カセグレン分光器 使用開始(~2001)

188 cm反射望遠鏡一般見学者室の一部をデータ処理室に改造

データ取得・処理用スーパーミニコンFACOM-S3300運用開始(~1996)

ロランCによる時刻補正時計の運用開始 1985 ユーザーと交流を深めるために竹林寺ニュースの発行開始岡山天体物理観測所施設特別公開(

9月、昼、夜) PIAS 購入。カセグレン分光器に装着しテスト開始 1986 地元を対象にハレー彗星観望会を開催(岡山天体物理観測所施設特別公開( 3月、鴨方町民会館)

9月、昼、~'91年まで毎年開催)

RCACCDカメラ、ニュートン焦点にて使用開始(~1997) RCACCDカメラ、クーデ焦点にて使用開始(~1998)

1987 岡山観測プログラム、年2期制に移行

1988 プログラム小委員会発足東京大学東京天文台より文部省国立天文台へ改組( 7月)

1989 後期より、岡山天体物理観測所の観測プログラムにスクリーニング制が導入される岡山天文博物館が岡山県から鴨方町に移管される。プラネタリウム設置 UNIX光ケーブルによる計算機ネットワーク構築(ワークステーション導入 運用開始 10Mbps) 1989

1990 観測所構内にて連結 LAN構築。188cm望遠鏡ドーム、91cm望遠鏡ドームと本館間、光ケーブル 1991 カセグレン分光器受光部をフォトメトリクス社CCD188 cm反射望遠鏡ドームスリット部、台風19号によるアルミ剥離(9月)カメラに交換

1992 山下泰正所長退官、前原英夫所長赴任(4月) カセグレン分光器SNGモード 使用開始

91cm:偏光撮像装置(OOPS、P90)使用開始(~2000年)

1993 望遠鏡制御系改修(構内ネットワークに繋がる)

1994 シューメーカー・レビー第9彗星の木星衝突、OASISによる観測成功(7月) OASIS 使用開始(SL9彗星木星衝突の近赤外観測)(カセグレン焦点、~200X)中型半自動フライス盤購入 1995 三鷹と専用回線(64kbps)で接続

1996 観測所ホームページ(http://www.oao.nao.ac.jp)開設 UBC-CCD(200×4096ピクセル)クーデ焦点にて実験(~1999) 1997 スリットユニット、ガイドユニット等更新(クーデ焦点、~現在に至る)太陽クーデドームと本館の間を光ケーブルにて連結 1998 三鷹と専用回線(128kbps)で接続

1999 HIDES 使用開始(クーデ焦点、~現在に至る)

2000 後期から岡山天体物理観測所施設特別公開再開(188cm反射望遠鏡プロジェクト制運用開始 11月、昼、夜)

HIDES運用開始(本格的高分散分光観測)

91cm:HBS堂平から移設、PI装置として運用開始(~2003年) 91cm:NIKON分光器堂平から移設、運用開始(~2002年)

2001

前原英夫所長退官、吉田道利所長就任 岡山天体物理観測所開所40周年記念式典挙行

岡山天体物理観測所施設特別公開(8月、昼、以降毎年8月に開催)

制御系改修

65cm:共同利用停止

サーバーマシン入れ替え、ギガビットイーサネット導入

2002 岡山天体物理観測所特別観望会(宿直の廃止、観測当番制へ 3月、夜、以降毎年春と秋に開催)

NIKON分光器188 cm望遠鏡での運用開始(~2003年)

外部ネットワークの増速(128kbps → 1.5Mbps)

シーイングモニタ専用ドーム設置

2003 巨星まわりの惑星を発見(10月)

S-OASIS運用停止 HBS(PI装置) 188 cm望遠鏡での運用開始(~2012年)

91cm:共同利用停止

2004 所内数ヶ所に落雷(大学共同利用機関法人7月)、台風被害(自然科学研究機構9月)国立天文台に改組

ドームスリットレール アルミカバー引き剥がし事故(7月) 188 cm望遠鏡再塗装

ドーム工事:ドーム回転モータ、回転ローラー、ドーム架線トロリー、スリットワイヤ 等交換、スリットレール再塗装、ドーム内安全対策工事

50cm反射望遠鏡(岡山MITSuME望遠鏡)観測開始

2005 外部ネットワークの増速(1.5Mbps → 100Mbps)

2006 岡山MITSuME(三つ目)望遠鏡、120億光年彼方の巨大爆発をとらえる(1月) ISLE、PI装置として公開ドーム棟耐震補強工事

2007 太陽系外惑星の発見数がおうし座に巨大惑星を発見(10個となる 3月)

2008 巨星のまわりに褐色矮星を発見巨星を回る惑星を -日中共同惑星探しの初成果-(1月)

7つ発見(9月) KOOLS、PI装置として公開

2009

コッタミア天文台(エジプト)の技術支援、188cm主鏡の再調整、カセグレン焦点用観

測装置製作の技術支援

吉田道利所長転出(広島大学宇宙科学センター)

宇宙最遠の巨大爆発を捉える(4月)

工場新築

ドーム架線交換

2010

泉浦秀行所長就任

岡山天体物理観測所50周年記念式典挙行

マイダナク天文台(ウズベキスタン)の技術支援、60cm鏡・50cm鏡の蒸着(4月)

2011 岡山MITSuME望遠鏡がとらえたGRB 巨星を回る新たな惑星系の発見(8月)

HIDES-Fiber PI型装置として公開

188 cm望遠鏡赤経軸の障害発生、共同利用13日+観測所時間5日の停止(11月)

91cm:OAOWFC観測開始

2012 日韓協力、中質量巨星を周回する惑星の発見論文発表巨星に 2個の巨大惑星を発見-日豪協力による初成果-(12月)

2013

宇宙空間に漂うサッカーボール(3月)

晴天のスーパーアース?(6月)

迫り来る爆発、「色」で予測可能に(7月)

中質量巨星HD100655を周回する惑星の発見(7月) “近所”で爆発した宇宙のモンスター(11月)

駆動系・制御系改修 ドームトロリー事故(10月) HBS運用終了

2014 「もや」のかかった温かい巨大ガス惑星(8月)

2015

国際天文学連合による太陽系外惑星系命名キャンペーンで、188cm反射望遠鏡で発見さ

れた惑星6個に命名

金属過剰を示す太陽型星周りに5つの系外惑星検出(10月)

KOOLS-IFU、PI装置として公開(~2016年) MuSCAT、持込装置として運用開始

2016

近傍の赤色矮星をまわる新たなスーパーアースを発見(3月)

クェーサーから噴き出すガスの変動メカニズムに新知見(6月) 生命がいるかもしれない惑星の“影”の観測に成功(11月)

MuSCAT、持込装置として運用開始 MuSCAT、PI装置として公開

KOOLS-IFU 188 cm反射望遠鏡での運用終了(12月)

2017

観測当番制廃止

灼熱の海王星型惑星K2-105bを発見~第2の地球探しへの足がかり~(2月) 巨星を巡る新たな複数巨大惑星系の発見(3月)

史上最も熱い惑星を発見(6月) 188cm反射望遠鏡の共同利用終了(12月)

HIDES-Fiber キュー観測モード公開 ISLE 検出器故障により運用終了(9月) 188 cm反射望遠鏡の共同利用終了(12月)

(8)

 日本一の188 cm望遠鏡を擁し全国の光赤外天文学研究者 のための共同利用機関として半世紀近い長い歴史を持つ岡山 天体物理観測所が、このたび共同利用の役割を京都大学の新 望遠鏡に委ね、国立天文台の施設としては発展的解消をする ことになりました。ユーザーとして長年岡山のお世話になっ た私としては感慨深いものがあります。当初この話を耳にし たときは岡山に愛着を持つ私としては大変残念な思いでした

が、この世の中に永遠に続くものはありません。188 cm鏡

は後継の京大望遠鏡に共同利用の大任を託すとはいえ、国内 の大学研究者の協力で活動を続けて系外惑星科学の観測を主 体に人々のお役に立つことができるのですから、幸せな余生 が与えられて本当によかったと思っています。

 系外惑星といえば、視線速度法による巨星周りの惑星捜索 は今では岡山観測所の看板的なサイエンスですが、これは

2000年に高分散分光器HIDESが立ち上がった頃から本格的

に始まりました。初期の頃は私もこの企てに少し関わってお りましたので当時を懐かしく思い出します。この成功の主た る要因はプロジェクト推進の中心的役割を果たしたメンバー の皆さんの努力の賜であったことはもちろんですが、今振り 返ってみれば時宜を得た幸運にも恵まれていました。何と いっても広い波長域をカバーして極めて安定度の高い高分散

クーデエシェル分光器のHIDESがなければ毎秒数メートルとい

う微小な相対視線速度変化の検出は困難だったでしょう。

1990年代に入った頃は来るすばる時代における岡山観測所

の役割や進めるべきサイエンスが熱く色々議論されていまし

た。分光学においては1960–70年代の岡山で中心的だった早

期型主系列星や赤色巨星など明るい恒星の高分散分光はすで に時代遅れの感があり、これからは分解能や安定性を多少犠 牲にしても恒星を用いた銀河系の研究などより暗い天体の観 測に重点を置くほうがよいという意見も強かったように記憶 しています。それもあってかコンパクトで効率のよいカセグ レンエシェル分光器が当初計画され、かなり実現に近いとこ ろまで来ていたと聞きます。しかし結局は国立天文台首脳に よる岡山会議での決定で従来のクーデ焦点分光器の堅牢な筐

体をそのまま生かしたHIDESに落ち着くのですが、今にし

て思えばよくぞこの選択をしてくれました。

 また世界初の系外惑星発見という出来事がちょうど起 こってくれたのは天の配剤ともいうべきでしょう。これは

HIDES計画が動き出した頃と概ね一致する時期ですが、こ のニュースは我が国ではなんらセンセーショナルに取り扱わ れることもなく、いたって静かな無関心に近いものでした。 太陽系の惑星とはあまりに異なる姿に信頼性を疑う人も少な くなかったこともあるでしょうが、一部の研究者の間で「こ んな惑星が星の周りに見つかったというが本当だろうか」 「いや何かの間違いではないか」という会話が交わされる程

度でした。ともあれHIDESが旗印として掲げる科学目的に

一つの時代の終焉に思う

竹田洋一

(国立天文台・光赤外研究部)

岡山天体物理観測所の

研究成果アラカルト

(9)

は系外惑星科学は入っていませんでしたが、結果的にはこの

HIDESの性能はまさにこの精密視線速度観測にうってつけ のものだったのです。それには温度の安定性の達成やクーデ 焦点周りの改良と遠隔操作の実現など観測所の技術職員の皆 さんの貢献するところが特に大きかった。また波長の基準の ために用いるヨードセルというガスフィルターは比較的安価 に作成できる装置であること、解析手法の基本的枠組はリッ ク天文台のグループによってすでに確立されて公開されてい たこと、も幸いしたといえましょう。ターゲットとして見か け上明るいものが大変多い巨星を選択したこともまさに正解

でした。そしてHIDESのファーストライトからたった数年

でG型巨星周りにアジア初の系外惑星発見に至ったのです

が、HIDESの構想時には誰も考えてもいなかった科学的成 果でした。「天の時、地の利、人の和」とよく申しますが、 天地人の三者が相俟って時の宜しきを得てこそ生み出された のではないでしょうか。

 それにしても昔日の様子を知る身としては、今日の技術 の進歩による観測形態のあまりの変貌ぶりにはただ驚くば かりです。写真乾板のWet Astronomyから電子的検出器の

Dry Astronomyへの転換は観測者に福音をもたらしました。 往時の観測は肉体的な負担が大きくかつガラス切りにおける 手先の器用さや微妙な星の色を見分ける判断力など個人の能 力に依存する点もありましたが、今は誰でも楽に観測できて 質・量ともに遙かに上回るデータが得られるようになったの は本当にありがたいことです。また天体導入についてもそう です。昔は制御盤の目盛りで大体の方向に向けてからおもむ ろに望遠鏡にかじりついてファインディングチャートを手に 案内望遠鏡を覗きながら行う結構な仕事でしたが、数年前に

188 cm鏡の制御系の改修がなされて天体導入の精度と効率 が著しく改善されたときにはその余りの速さと正確さに驚 き、オリンピックの体操競技の中継などでアナウンサーが用 いる「ナイフの突き刺さるがごとき着地」という表現を思い 起こしました。今後は半自動的な観測遂行システムも検討さ れているそうですから更なる発展が期待されましょう。

 ただ、この「楽に速く多く」があまりに行き過ぎて、機械 任せで観測に人間が介在しなくなることには少々懸念を感じ ます。対象となる天体への礼儀というか、それと真剣に対峙 することでこそ魂がこもった研究ができるという側面もある のではないでしょうか。また辛くとも心を込めて取り組んだ 体験によって成し遂げたことは記憶にしみこんで消えませ ん。昔の分光観測は暗闇のクーデ室でひたすら星を見て精神 集中して長時間ガイドとトレールを行っており、終わったと きは疲労感に苛まれたものです。また観測が終わった後の暗 室内での乾板の現像も枚数が多いとなかなか大変でした。た だ今になってことさら懐かしく思い出すのは、この単調で辛 かった初期の頃の観測とデータ解析のことです。あの眠かっ たこと、洗ってもなかなか指から消えない独特の定着液の匂

い、大きな机に巻紙を広げて鉛筆と定規でこつこつ行ったス ペクトル線の測定、…。もちろん今に比べれば効率的には ずっと劣っていたのですが、当時の経験は私にとって貴重な 無形の宝として身についているように思います。

(10)

 いっかくじゅう座、ばら星雲の近くにあるHESS J0632+ 057(以下HESS J0632)は、B型星と高密度星との連星系

です。X線よりも強いガンマ線を放射し、軌道位相に沿った

変動を見せ、『ガンマ線連星』と呼ばれています。

 ガンマ線連星では、可視伴星はO型星か星周円盤をもつB

型星、つまり大質量星と分かっている一方で、高密度星はブ ラックホールか中性子星か分かっていない系が殆どです。し

たがって、どのように粒子加速が起き、TeV帯域にまで及ぶ

超高エネルギー放射を起こすのかは謎に包まれています。有 力な説として、『星風衝突説』と『マイクロクェーサー説』 が提唱されています。前者は、パルサー風(中性子星からの 超高速のプラズマ流)と恒星風並びに星周円盤との衝突域で 粒子加速が起きる、と考えています。高密度星が電波パル サーと分かっているPSR B1259-63で確立された説です。一 方で、パルサー風を持たない中性子星或はブラックホールに 大質量星から質量が輸送され、ジェットを形成すると、そこ で粒子加速が起きると考えるのがマイクロクェーサー説で す。高密度星の正体が分からないため、いったい大質量連星 のどのような進化を経てガンマ線連星系として存在するのか も未解明なままになっています。

 HESS J0632は、ガンマ線連星の中でも特異で、近星点よ

りも遠星点の前後でX線やガンマ線で増光し、Hα等で輝線

変動を見せています。何がこの系で起きているのか、まずは

コンパクト天体の正体を探ろう、そう思い私たちはHIDES

を用いたHESS J0632の観測を計画しました。高密度星との 相互作用によって星周円盤の構造変化を調べれば、その正体

が分かる、と考えたからです。ただ…軌道周期が315~321

日と全位相を系統的にカバーするのが大変。一年で位相~

0.2程しかずれないからです。それでも、観測を実行しよう

と決心できたのは、プロポーザルを出すか迷っていた時に、 泉浦秀行所長から頂いた一言のお陰です。「岡山観測所では、 なるべく柔軟性をもって、ユーザーのよい『我儘』に対応し

ていきたいのです。」実際に、観測を行った4年間(2013年

後期~2017年前期)、10日間から2週間に1回、4時間のみと いう観測を割り当ててくださいました。このような細かい観 測時間の配分はかなり難しかったのではと思います…観測所 やプログラム小委員会の皆様の融通にお礼申し上げます。ま た、このスケジュールで観測を実現できたのはリモート観測 があったからです。柳澤さんを始め、リモート観測環境の整 備・運営に尽力なさった方にも感謝申し上げます。

 さて、観測初年の観測では、遠星点の後に輝線に約30日

以下の短期間変動が見られた反面、近星点前後で全く変動が

見られませんでした。これらの事実はHESS J0632において

は潮汐相互作用が極めて小さいことを示唆します。潮汐相互 作用はマイクロクェーサー説を支持する有力な指標のため、 この説は棄却できるのかもしれないと分かりました。また、

近星点付近でX線やガンマ線で暗いのは、パルサーが星周円

盤の濃い領域を通過するために、円盤のガス圧に負けてパル サー風が止まるからではないかと考えました(Flip-flopping

パルサー説:Moritani et al. 2015 ApJ Letter, 804, L32)。こ の仮説に基づくと、星周円盤の濃い領域を抜け、パルサー風

が復活するとX線・ガンマ線で増光すると考えられます。こ

のとき、復活したパルサー風に押されて、星周円盤が変形し 輝線が変化すると考えられます。

 その後の3年間、この仮説を検証するために観測を継続し

ました。しかし、期待に反してまったく変化が見られませ んでした。「Flip-flopping パルサー説」は間違っていたので しょうか。何か見落としているのかもしれない…ここで、 私たちは基本に立ち返ってみました。先行研究(Casares et

al. 2012, MNRAS, 421, 1103)でも報告されていましたが、

Hα輝線の中心速度が軌道運動にあっていないのです。この

変化は私たちの初期観測でも確認されていました。ただ、輝 線は星周円盤の影響を受けている可能性があります。そこ で、Shafter et al. 1986, APJ, 308, 75 で提唱された、輝線の

HIDES で切り込んだ

ガンマ線連星 HESSJ 0632 + 057 の正体

森谷友由希

(東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構)

(11)

 私を筆頭とするグループにおいては主に広島大学かなた望 遠鏡を用いて近傍超新星の追観測を推し進めてきた。岡山天

体物理観測所内の望遠鏡においては、主に6天体まとまった

データを取得させていただいた。2011年に光赤外線大学間

連携事業が発足して以降は、50 cm MITSuME望遠鏡による 観測が貢献した。ここでは、特にインパクトの大きな成果と

なった、スーパーチャンドラセカール超新星SN 2012dnの

可視・近赤外線観測について簡単に紹介させていただく。

 Ia型超新星爆発は、その光度曲線と絶対光度の間に経験則

が認められ、光度曲線から未知の銀河までの距離を推定する ことができる“標準光源”である。連星系をなす白色矮星の 中心付近が臨界密度に到達したときに熱核暴走反応が引き起 こされ、爆発に至る。この時の質量は、チャンドラセカール 限界質量と呼ばれる。白色矮星は一定の質量で爆発に至るた め似通った観測的性質を示す。しかしながら、爆発に至る過

程は明らかになっていない。“標準光源”として使われるIa

型超新星にとって重大な問題である。

 伴星を典型的な恒星あるいは赤色巨星とし、質量降着に よって白色矮星が限界質量に至る“降着シナリオ”、二つの 白色矮星同士が衝突合体し、限界質量を超える“合体シナリ オ”の二つが主に提唱されている。この二つのシナリオを解 くカギは星周物質にある。“降着シナリオ”においては、伴 星である赤色巨星からの星風、あるいは降着する白色矮星か らの光学的に厚い風が吹く。一方で、“合体シナリオ”にお いては、二つの白色矮星が形成された後に非常に長い時間を かけて合体衝突に至るために、星周物質はほとんど拡散して しまう。したがって、もし濃い星周物質の兆候を捉えること ができれば、“降着シナリオ”を支持することができる。  このような状況の中、限界質量近くの白色矮星からの爆発

では説明できないような極めて明るいIa型超新星が発見さ

れるようになった。スーパーチャンドラセカール超新星(以

降、SC超新星とする)である。その観測的特徴は、回転の

小さい白色矮星では説明が困難であり、状況は混とんとして いた。

 2012年これまでのSC超新星に比べて最も近傍の銀河に

SC超新星候補となるSN 2012dnが発見された。当時、光赤 外線大学間連携による突発現象観測に枠組みが構築されつつ

あり、ToO観測を通して密なデータを取得する絶好の機会と

なった。

 得られた光度曲線は、常識では考えられないような振る舞

いを示した。近赤外線において、120日以上にも及ぶ長く明

るい期間を示したのである。これまでに良く観測された別の

SC超新星の近赤外線光度曲線をテンプレートとして、SN

2012dnのものから差っ引く処理を施したところ驚くべき結

果を示した。可視の極大光度から40日ほど経過した後に、

急激に上昇し、その後フラットな変化を示す光度曲線を示し たのである。これは“近赤外線エコー”と呼ばれる現象で、 超新星放射を受けた0.1~0.2パーセクに存在する星周ダスト による再放射で説明可能である。見積もられた質量損失率は “降着シナリオ”で期待されるものと一致し、一方で濃い星 周物質の存在は“合体シナリオ”と合わない。我々の観測は

“降着シナリオ”を支持する。SC超新星の特徴を説明するた

めには、“降着シナリオ”における高速回転する白色矮星が 抜け道となるが、さらなる研究が待たれる。

光赤外線大学連携を通じた近傍超新星の徹底観測:

スーパーチャンドラセカール超新星の正体に迫る

山中雅之

(広島大学宇宙科学センター)

光赤外線大学間連携を通じて取得された SN 2012dn の可視近赤外線光度曲線。 岡山50 cm 望遠鏡においては , g’RI バンドで大きな貢献があった。

裾(wing)を使う円盤の影響をなるべく取り除いた方法を

用いてHα線の中心速度を求め直しました。やはり軌道運動

にあっていない(図:左)。近星点と遠星点が逆転している のです。また、周期がこれまでに提唱されているものよりは 短いことを示唆しています。Swift/XRTによるX線アーカイ

ブデータと比較し、軌道周期を313日に更新し(図:右)、

さらに、Hα線の視線速度を使って軌道解を求めました。更

新した軌道解からみると、これまでよりもシンプルに、円盤

面と軌道面は交わるところでX線・ガンマ線増光が起きると

示唆されました。また、軌道傾斜角が3度よりも小さい場合

を除いて、コンパクト天体の正体が中性子星であることが分

かりました。これらの結果は現在PASJに投稿中です。

●参考文献

(12)

 私たちの研究グループが岡山天体物理観測所で本格的に観

測を実施するようになったのは、2014年春のことである。

岡山観測所は、私の生まれ故郷(兵庫県佐用町)の隣接県と いうこともあり、子供の頃からの憧れの天文台であった。ここ 岡山での私たちの研究対象は、彗星の爆発現象(アウトバー スト)である。これまでに、 188 cm反射望遠鏡/京都岡山可 視低分散分光撮像装置(KOOLS)やMITSuME 50 cm望遠鏡 を用いて観測を実施してきた。共同研究者の黒田大介さんに 現地で観測対応して頂き、万全の体制で研究に挑んできた。  そもそも彗星は、人類の歴史において様々な局面で登場 し、人々の恐怖心を駆り立ててきた。そんな彗星本体の姿が 世界ではじめて捕らえられたのは、1986年のGiotto探査機 によるHalley彗星の直接撮像である。これ以降しばらく途

絶えていたが、今世紀にはいると相次いで4機の探査機が異

なる5つの彗星を訪問した。彗星物質を持ち帰ったStardust 探査、彗星本体の一部を破壊したDeep Impact探査、そして

最近では、彗星にランデブーしたRosetta探査、などが挙げ

られる。こうした彗星探査によって、彗星核表面の物理化学 状態がしだいに明らかになってきた。彗星は、惑星を作った 構成物質(planetesimals)の生き残りである。こうした天

体は、太陽系形成以降46億年間ずっと涼しい領域に冷凍保

存されてきたのだが、最近(<<100万年)になって太陽系の 内側に輸送され、太陽の熱による氷の昇華よって物質を巻き 散らかし、あのような雄大な姿をみせているのである。探査 機搭載カメラに映し出された彗星核表面の大部分は、太陽の 熱で生じたダストマントルに覆われていたため、その内部の 状態は今なおよくわかっていない。

 今から約10年前、彗星研究者にとって、衝撃的な出来事

が起こった。これまでほとんど無名だった「Holmes」とい

う名前の彗星が突然爆発し、一晩のうちに約100万倍の明る

さに増光したのだ。このアウトバーストで放出されたエネル

ギーは阪神・淡路大震災(マグニチュード7.0-7.5)に匹敵

する。このアウトバースト現象の前は、Holmes彗星は太陽

の熱で氷がほとんど枯れた天体だと考えられていた。こうし た枯れた彗星核の地下にこれほどまでのエネルギーが蓄えら れているとは予想だにしなかった。どうして彗星はアウト バーストするのだろうか? また、こうした現象はどのくら いの頻度で起こっているのだろうか?

 2015年1月17日、共同研究者の花山秀和さん(石垣島天文 台)からFinlay彗星が増光しているとの連絡があった。そ

の日の夜以降、岡山では3日続けて晴れ。黒田大介さんから

MITSuME 50 cm望遠鏡で撮像された興味深いFinlay彗星の 画像が連日送られてきた(図参照)。この画像には、アウト

バーストによって放出された物質が、太陽輻射圧によって 拡がっていく様子が見事に捕らえられていたのだ。この爆 発のエネルギーはマグニチュード6.0~6.5の地震に匹敵する

[1]。アウトバーストの瞬間が多色で捕らえられたのは、世

界でもこれが2例目となる。こうしたFinlay彗星規模のアウ トバーストは、あまり気づかれていないだけで、ほぼ毎年の ように起こっていることもわかってきた。さらに、彗星は一 旦アウトバーストを起こすと表面の不活性層が剥ぎ取られ活

発に活動し、数年のうちに枯渇する様子が188 cm反射望遠

鏡等による観測から明らかになった[2]。後者の研究論文は、

当研究室の大学院生Kwon, Yunaさんが中心となって研究さ

れたもので、教育面でも岡山観測所のデータを活用させて頂 いている。最後に、このような素晴らしい観測所の立ち上 げ、運営に尽力された方々に深く感謝する。

岡山天体物理観測所での

彗星アウトバーストの研究

石黒正晃

(ソウル大学物理天文学科)

Finlay 彗 星 ア ウ ト バーストの瞬間。g' バ ン ド を 青、Rc バ ンドを緑、Ic バンド を赤に割り当てて、 BGR カ ラ ー 合 成 し ている。IAO は石垣 島 天 文 台、OAO は 岡山天体物理観測所 を意味している [1]。

●参考文献

[1] Ishiguro, M., Kuroda, D., Hanayama, H., Kwon, Y. G. et al.

Astronomical Journal 152, 6, 169(2016)

[2] Kwon, Y. G., Ishiguro, M,. Hanayama, H., Kuroda, D. et al.

(13)

Radial velocity survey

of detached eclipsing binaries

Krzysztof Helminiak

(N. Copernicus Astronomical Center, Polish Academy of Sciences and Subaru Telescope, NAOJ [till 2016])

Figure 1: Radial velocity curve of KIC 9246715, a Galactic eclipsing binary containing two red giants, one of which is showing solar-type oscillations.

Detached eclipsing binaries (DEBs) are pairs of stars orbiting each other and eclipsing periodically, but apart from that show almost no direct interactions. Since they do not interact, their components evolve as single stars, but thanks to the fortunate geometry, which results in eclipses, we

can measure basic stellar properties, dificult or even impossible to obtain

from single stars. One of them is mass, the most crucial parameter that determines life of a star. This makes DEBs one of the most important objects in astronomy. With new generation of high-resolution spectrographs, like HIDES, we are able to measure radial velocities (RVs) of DEBs much more precisely than several years ago, and from them calculate masses of stars with smaller uncertainty. Having precise masses (and other parameters)

for a large number of stars not studied previously, was one of the goals of the RV survey of DEBs conducted with OAO-188 cm and HIDES.

The survey started in 2014 and lasted till the end of 2017. It was a part of a larger project, initiated in 2011 in Chile. With HIDES we have collected over 1200 spectra of 100 DEBs. We focused on systems that show unusual characteristics or contain stars of rare or poorly studied classes. We have also focused on bright DEBs observed by the Kepler satellite, so we could take advantage of its exquisite photometry.

Observations of large number of stars lead to many discoveries. One of the

irst published results was an analysis of KIC 9246715 (Fig. 1). It is a system which contains a solar-type oscillator, a kind of pulsating star, for which is also possible to obtain masses and other parameters, applying methods of asteroseismology. For only the second time in history (at the time of publication), these results could be directly compared with parameters obtained directly from DEB analysis. Moreover, this binary turned out to be composed of two red giants, only the third one known in our Galaxy with parameters measured with such a good precision. Another interesting class

of pulsating stars are so called γDor-type stars. Also in these cases, there

are only several known examples of such stars in eclipsing binaries, and in our survey we have found another one- KIC 10031808.

One of the most intriguing cases was another Kepler eclipsing binary, that also includes a pulsating (hybrid δSct/γDor object―KIC 4150611). From

the satellite's observations we knew about four independent periods of eclipses, and a closer look revealed three point sources in high angular resolution images. HIDES observations helped to establish, that the two brighter sources contain at least five distinct stars, in a complicated

coniguration responsible for three out of four eclipsing periods. Thanks to

the HIDES data we could also measure the properties of some of the stars and estimate the age of the system. It is still an open question where does the fourth set of eclipses come from, and how many stars are actually in the system. We suspect there could be up to seven, but observations continue. The whole survey brought many more interesting results, that are still to be published. Among them are discoveries of new multiple systems, low mass stars, or pre-main-sequence objects. Our observations were also supplemented with photometry from the MITSuME telescope in OAO, for

example for a sample of DEBs containing two very different components―

a hot, bright primary star and a cold, small, red secondary (Fig. 2). Such systems are also quite unusual, and valuable for testing the models of stellar structure and evolution.

Analysis of all the data collected at OAO is ongoing and more results will be published in the near future.

Figure 2: Radial velocity (left) and light curves (right) of ASAS-073, a system composed of two very

different stars. Observations include spectroscopic data from OAO-188 cm/HIDES and photometry

(14)

「第二の地球」を見つけることは太陽系外惑星研究における 長年の夢であり、一つの目標である。一昔前までこの目標は

遠い存在であったが、この10年で状況は大きく変わり、目

標にかなり近づいたと言える。近年の観測技術の進歩によっ て、今や地球に似たサイズや重さの惑星は(環境が似ている かどうかは別にして)当たり前のように発見されるように

なった。特に、2009年にNASAが打ち上げたケプラー宇宙

望遠鏡は、惑星の食(トランジット)による主星の僅かな減

光を捉えるトランジット法により、地球サイズ(地球の1.5

倍以下)の惑星及び惑星候補を1千個以上発見し、地球の月

程度(地球の3分の1以下)のサイズの惑星(Kepler-37b)を 発見するにまで至っている。

 トランジット法を用いれば、小さな惑星を発見することが できるだけでなく、その軌道要素や質量、大気成分などの詳 細情報を得る事もできる。そのため、今後は発見された地球 型のトランジット惑星に対して、様々な詳細調査を行ってい くことに注目が集まっている。ところが、ケプラー宇宙望遠 鏡が見つけた惑星系の大半は太陽系から遠く、主星が非常に 暗いため、個々の惑星の環境を詳細に調べることは困難であ る。そこで現在、できるだけ太陽系に近い距離にある地球型 惑星を見つけるべく、地上およびスペースからの様々な探索 が進行中あるいは計画中である。

 我々の研究チームではこれまで、そのような太陽系近傍で 小型のトランジット惑星を発見し、その後の詳細観測に繋げ

るべく、岡山観測所の188 cm望遠鏡向けに高感度の多色撮

像カメラ「MuSCAT」を開発し(Narita et al. 2015)、観測 を行ってきた。MuSCATを用いれば、可視光域の3バンド(g,

r, zバンド)で同時かつ高精度に惑星トランジットを捉える

ことが可能である。MuSCATで目指すサイエンス目標の一

つは、他の望遠鏡による惑星探索で発見される惑星候補に対 して、いち早く発見確認を行うことである。実はケプラー宇 宙望遠鏡などの惑星探索で発見されるトランジット惑星候補 天体の中には、食連星が混入することで生じる偽検出が一定

割合含まれる。例えば、食連星自身は数十%という大きな

食の減光を示すが、食連星が3重連星系を恒星している場合

など、ごく近くに別の星が存在する場合には、その別の星

の光によって減光率が1 %以下にまで薄められ、惑星トラン

ジットと見間違えてしまう場合がある。しかし、このような 場合でも、観測する波長によって減光率の薄まり方が一般的 に異なるため、多色でトランジットを観測して減光率の違い を見ることで、偽検出かどうかを容易に見分けることができ る。我々はこれまで、ケプラー宇宙望遠鏡の第二期探索であ

る「K2ミッション」で発見された惑星候補に対してトラン

ジットの多色フォローアップ観測を実施してきた。その結

果、複数の偽検出天体を同定するとともに、これまでに3つ

の惑星(K2-28b, K2-105b, K2-151b)について色による減光 率の違いが見られないことを確認し、惑星発見に大きく寄与 した。その中の1つ、EPIC220621087.01は、サイズ(半径) が地球のたった1.35倍しかなく、これまでにMuSCATで捉 えた惑星の中で最も小さい(Hirano et al. 2018, 図01)。世

界でみても、ケプラー宇宙望遠鏡で発見された惑星のうち、 これより小さな惑星のトランジットを地上の望遠鏡で捉えた

例はない。MuSCATの性能の高さと有用性を示す観測成果

と言える。

 地上望遠鏡による地球型トランジット惑星のフォローアッ プ観測にはもう一つ大きな意義がある。それは、トランジッ トの周期の決定精度を大幅に改善することができる点であ る。K2ミッションでは1つの探索領域が約80日間しか観測さ れない。そのため、公転周期が数十日あるような長周期惑星

の場合、K2では数回のトランジットしか観測されず、公転

周期を精度良く求めることができない。正確な公転周期が分 からなければ、将来起こるトランジットの時刻を正確に予測 することが難しくなる。トランジット時刻の予測誤差は時間 とともにどんどん大きくなるため、いち早く別の望遠鏡で追 加のトランジットを観測して周期の測定精度を上げなけれ

多色トランジット測光による

地球型系外惑星の観測

福井暁彦

(岡山天体物理観測所)

(15)

ば、最悪の場合、近い将来にトランジットを見失ってしまう

可能性もある。特に近年、K2ミッションによって温暖な軌

道領域(ハビタブルゾーン)を公転する長周期の地球型惑星 が太陽系近傍でいくつか発見されており、次世代の大型望遠 鏡を使った「生命」の兆候(バイオマーカー)探しに期待 が高まっているが、そのためにはまず、追加のトランジッ トを観測して公転周期の測定精度を上げることが急務とな

る。我々はこれまでにK2で発見された惑星の中で、最も有

望な(主星が明るく、惑星のサイズが小さく、かつハビタブ ルゾーンに位置する)惑星であるK2-3dに対し、MuSCATを 用いて地上で初めてそのトランジットを捉えることに成功し た(Fukui et al. 2016, 図02)。この惑星によるトランジット

の減光率は、僅か0.06 %しかない。これは地球の大気に由

来するノイズが邪魔をする地上の観測で捉えられるギリギリ

の大きさであるが、MuSCATがもつ多色性をうまく利用し

て地球大気由来のノイズを低減することで、地上からでもこ の「第二の地球」候補の影(トランジット)を捉えることが できた。この観測により、惑星の将来のトランジット時刻の 予測誤差を大幅に減らすことができ、将来のバイオマーカー 探索への道が繋がった。

 我々は今後も、188 cm望遠鏡とMuSCATを用いて上記 のような科学観測を進めつつ、地球よりやや大きめの惑星

(スーパーアース/ミニ海王星)の大気の特性を探る観測も

進めていく予定である(詳細は22ページの成田憲保氏の記

事を参照)。

図02 生命の住める環境をもつ可能性のある惑星 K2-3d のトランジットを捉え た MuSCAT の観測データ。

●参考文献

(16)

●188 cm 望遠鏡と HIDES を用いた視線速度精密測定

 恒星の視線速度変化を数m/s以下の超高精度で測定する技

術は現代天文学において重要な役割を担っており、系外惑星 探索や恒星微小振動の検出等に広く利用されている。例えば 系外惑星探索においては、主系列星や巨星など多様な恒星を 周回する低質量の地球型惑星から巨大な木星型惑星まで、ま た、公転周期数日の短周期惑星から木星軌道以遠の長周期惑 星まで幅広いパラメータ領域の惑星に検出感度があり、かつ 惑星軌道を精度よく決定することが可能な手法として、惑星 の検出のみならず惑星の物理量を正確に決定するために必要

不可欠なものとなっている。特に、木星~土星軌道付近(5

~10天文単位)のまさに巨大惑星が形成される領域の惑星

を検出し、その性質を調べることは惑星形成及び進化の過程 を解明する上で本質的に重要であるが、これは現在のところ 高精度の長期視線速度観測によってのみ可能であり、近年の

Gaia衛星によるアストロメトリや直接撮像観測との相補的

関係によって益々その重要性が増している。また、稼働中の Kepler宇宙望遠鏡や、近い将来打ち上げが予定されている精 密測光観測衛星(TESS、PLATO等)によって発見されるト ランジット惑星の質量を決定するための手段としても視線速 度精密測定法は必須のものである。

 岡山天体物理観測所(以下、岡山観測所)では、竹田洋一 氏、神戸栄治氏らによって2000年に188 cm望遠鏡の可視高

分散分光器HIDESに視線速度精密測定用のヨウ素ガス吸収

フィルターが導入され、以来17年間、精力的かつ継続的な

技術開発によって現在約2–3 m/sという測定精度が実現され

ている[1]。これは同程度の口径の望遠鏡では世界トップク

ラスの性能である。また、17年という観測継続期間は、世

界の名だたる系外惑星探索望遠鏡と肩を並べるものであり、

現に公転周期2500日以上の惑星系を発見しているのは岡

山を含めて世界で7拠点(Lick、Keck、McDonald、AAO、 Haute-Provence、La Silla、岡山)のみである[2]。これは、

188 cm望遠鏡とHIDESが早い時期から高精度の観測を実現 し、その後長年に渡って安定的にユーザーに供されてきたか らに他ならない。また、岡山観測所と同程度以上の測定精度 を実現している拠点は東アジア地域には存在せず(南半球に

はAAOがある)、国内で視線速度精密測定観測ができる設備

を有する拠点も岡山観測所のみであり、現時点でこの機能を 肩代わりできる拠点は他に存在しない。さらに、このような

長期的なモニター観測はすばる望遠鏡やTMTのような競争

倍率が極めて高く観測時間の限られる大口径望遠鏡では実質

的に不可能であり、188 cm望遠鏡のような観測時間の自由

度が高い中小口径望遠鏡でこそ可能な観測研究である。

●これまでの研究成果:系外惑星探索と星震学

 この視線速度精密測定技術を利用して、188 cm望遠鏡で

は「中質量G型巨星における系外惑星探索」や「太陽型星に

おける長周期惑星の探索」、「太陽型星及び巨星における星震

学」などユニークな観測研究が17年間にわたって展開され

てきた。以下にその成果を簡単にまとめる。

188 cm望遠鏡と視線速度精密測定

佐藤文衛

(東京工業大学)

188 cm反射望遠鏡のこれから

(17)

●中質量 G 型巨星における系外惑星探索

 従来、系外惑星探索の主たる対象は太陽型星(FGK型の

主系列星)であり、同恒星については周回する系外惑星の軌 道や質量などの統計的分布がかなり明らかになりつつある。 一方、それ以外のタイプの恒星については依然として惑星探 索が不十分であり、統一的な惑星形成・進化の理解にはほど 遠い状況にある。特に、太陽より質量の大きな恒星(以下、 中質量星と呼ぶ)は主系列段階では高温のためスペクトルに 吸収線が少なく、また、それらは高速自転によって線幅が広 がっているため、視線速度法による惑星検出が実質的に不可 能であった。

 筆者(佐藤)らは、中質量星が進化して低表面温度・低速

自転となったG型巨星においては視線速度法による惑星検

出が可能であることに着目し、中質量星における惑星系の発

見とその性質の解明を目的として、2001年からG型巨星を

対象とした大規模な系外惑星探索を世界に先駆けて展開し

てきた。このプロジェクトは今も進行中である。この間、G

型巨星における初の系外惑星[3]、散開星団における初の系

外惑星[4]、特徴的な複数惑星系[5]等を含む約30個の系外惑 星・褐色矮星を発見し、中質量星における巨大惑星の性質を 明らかにしてきた。また、この惑星探索は野口邦男氏、泉浦 秀行氏らのリードで中国[6]や韓国[7]、トルコ・ロシア[8]と の共同研究に発展し、さらにオーストラリアの望遠鏡を使っ た共同観測も行われている[2,5]。2015年には、国際天文

学連合が実施したキャンペーンによって19の系外惑星系に

名前がつけられたが、そのうちの6系(HD104985, epsilon Tauri, HD81688, 14 Andromedae, 18 Delphini, xi Aquilae)は

岡山観測所で発見されたものである(図01)。

● 太陽型星における長周期惑星の探索

 これまでに知られている太陽型星周りの惑星についての統

計的情報は、そのほとんどが3天文単位以内の惑星について

のものであり、より遠方の惑星についての知見は現在もほと んどわかっていない。このあたりの領域は、惑星形成論にお いてガス惑星のコア形成が促進される場であると考えられて おり、遠方の惑星分布を正しく知ることは木星・土星といっ た太陽系惑星形成論との比較においても重要である。しか

し、3~10天文単位に存在する惑星は種々の惑星探索におい

て検出が困難なことで知られており、例えばトランジットの

発生確率は極めて低く、直接撮像でも10天文単位以内の惑

星については検出が難しい。

 このような遠方惑星を発見する最も着実な方法は、長期的 観測によって中心星の視線速度変動を検出することである。

そこで原川紘季氏らは、2004–2006年頃に筆者や井田茂氏

らによって行われた、すばる望遠鏡などを用いたFGK型星

周りの惑星探索プロジェクト「N2K」が取得した大量の観測

データに着目した。原川氏らは、系外惑星探索初期にスター

トしたN2Kの時間的優位性を活かし、2009年から長周期惑

星の検出とその性質の理解を主眼に据えてこれらの天体の フォローアップ観測を岡山で行ってきた。最新の結果では新 たに5つの惑星が検出され、そのうち2つは軌道長半径が4天 文単位に迫る長周期惑星であるなど、着実な成果が挙がって いる[9]。

 また、この他にも、太陽型星からなる連星系を対象とした 系外惑星探索も豊田英里氏、加藤則行氏らによって行われた [10]。

● 太陽型星及び巨星における星震学

 恒星の微小振動を利用し、その特徴から恒星内部を探る学

問は、1980年代後半の日震学の成功によってその重要性が

実証されたが、同じ手法を一般の恒星に対して適用する「星 震学」はその観測の困難さから長年進展がなかった。しか

し、2000年以降の視線速度精密測定技術の著しい進歩や、

CoRoT、Keplerといった超精密測光観測衛星の登場によっ

Figure 1:  Radial velocity curve of KIC 9246715, a Galactic eclipsing binary containing two red  giants, one of which is showing solar-type oscillations.

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